1月30日(日)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
個人的には今年初めてのカンムリ調査、1月初旬の調査でたくさん出ているので、おこぼれを期待したのですが、なかなか見つけることができず諦めかけた時、やっと出てくれてホッとしています。
概況を記します。
天気:曇りのち晴れ(14時頃から晴れ間が)
調査時間:9:40から14:40まで
調査結果:カンムリウミスズメ 10(午前中に目撃した飛翔個体2羽は、午後カンムリを見つけた海域へ飛んで行ったのでダブルカウントの可能性あり)
アビ類 37
この日のビッグニュースはRさんの約1年ぶりの調査への復帰。私としては心強いが、まだまだ体力が回復していないとのことなので心配。昨年、調査の後に体の変調の状態を聞かされ、即通院を勧めたのだが、結果、私の「見立て」通りで、かなりやばい状態だったようだ。その後、入院、手術、リハビリと頑張って、今日を迎えられたわけで、本当に良かったと思う。
ゲスト参加のKM夫妻も含め7名が乗り込み、久しぶりに目の多い調査となる。波はややあるが、年明けの調査の結果がよかったので、期待に胸を膨らませて出港。
先ずは、コウモリ調査のデータ回収作業をすることに。潮が高くないと着岸できないため、いつでもできる作業ではないのだ。研究者Tさんと私が上陸する。私の役目は写真撮影。データ回収にしては作業に時間がかかっている。後で聞くとケーブルが齧られていて、断線していたとのこと。その補修に時間がかかったらしい。
生息調査のため洞窟内に入る。しばらく行くとコウモリが1匹岩にぶら下がっていた。天井ではなく横壁の3分の2あたりの場所にじっとしていた。あまりに動かないので死んでいるのかとも考えたが、岩につかまっているので生きているはずだ。冬眠? 生態を知らないというのは恐ろしいものである。何枚も写真を撮った後に気づいたのだから。
以前、見られた奥の方には全くいない。Tさんがいろんな角度から接写した画像の中にキクガシラコウモリ類の特徴である「豚鼻」が写っていたらしく、体長から見てコキクガシラコウモリで間違いないと思うとのことだった。少し時間はくったが仕切り直しでカンムリ調査開始。
沖でRさんが鳥影を見つける。カモメ類とは別にアビ類らしき鳥も何羽か潜水を繰り返していた。アビ類は結構長く潜るので、次どこに浮かび上がるか分からず見失うことも多い。ウも近くにいたので、本当にアビ類だったのか自信が揺らぐ。
そのすぐ後にも、アビ類が見つかり、見間違いではなかったと確信できた。思ったより波の影響があって、見つけても波間に見え隠れするため、証拠写真が撮れない。色合いからアビではない(筆者は未だアビは見たことがないが)とは分かるが、シロエリオオハムなのかオオハムなのか同定は難しい。波間で脇腹を確認するのは無理だとしても、ピントの合った写真が撮れて、喉のところに黒っぽいラインが確認できれば、シロエリオオハムと言い切れるのだが、船上で液晶モニターを見てもよく分からない。ということで無難なアビ類という表現にしている。
沖合へ進んでいる時、遠くの海上を2羽、ウミスズメ類の特徴ある飛び方で島方面へ飛んで行くのを目撃。見たのが私だけなので、記録として挙げてもよいかどうか迷う。
沖合でもカンムリの姿はなく、月の初めにはあれけの数が見られたのに、どうしたことだろうと誰もが思ったに違いない。船が方向転換し北上を始めると風や波が強まり、体が冷えてくる。船上で配られたチョコレートを口にしても、熱量アップにはならない。それでもカンムリ探しに集中し続ける。
島周辺でアビ類が僅かに見られたものの、午前中の調査では、ハッキリカンムリと分かるものはゲットできずじまい。昼食・休憩で上陸した祝島での話題は、やはり、あれだけいたカンムリはどこへ行ったのか、だった。
各自、トイレに行ったりしたこともあってか、いつもより会話が進まない。KM夫妻が持参された「ゆきごろも」というお菓子が配られ、この時ばかりは話が弾んだ。上品なお菓子でみんなが美味しかったと。私も、包装紙に書かれた製造元を見て、淡雪で有名な下関の「松琴堂」のお菓子?と、淡雪の蘊蓄を少々。何と船長、淡雪が大の好物とのこと。1本まるまるペロリだとも。私も淡雪には目がなく、淡雪談議で暫し盛り上がった。お茶うけにと道の駅上関海峡で買ってきた栗饅頭を出すタイミングを失した。この饅頭は6個入り、参加者は8人、そのことも出しそびれた原因になっている。
午後からの調査の初めに島の南西岸にある岩礁地に回ってもらう。ウミウの群れにヒメウが混じっていないか確かめるためだ。ウミウが10羽弱いたが、ヒメウはいなかった。
その後、北方でアビ類を見つけ撮影。何とかシロエリオオハムと分かる写真が撮れた。岩場にミサゴを見つけたので、船を寄せてもらったが、早々と飛ばれてしまい、バッチリ写真は撮れなかった。
島東方の崖上に止まっている鳥を船長が見つけ船を進める。私は早々にトビだと分かったので、近くの岩礁に止まっているウ類に注目した。双眼鏡で確認するとヒメウらしき鳥がいるのが分かったので、船が近づいて飛ぶ前に押さえに何枚か撮影する。やはりヒメウが写っていた。
島を抜けると島が北風を遮るのかべた凪状態になった。遠くまで見渡せるがカンムリの姿はない。沖合まで進むとやはり波が出てくる。
沖合を進んでいる時、右舷の遠い波間に一瞬、鳥らしきものが見えたので、船をそちらに進めてもらう。自信はなかったが、しばらくするとカンムリのペアが見つかる。良かったと言っていると、すぐ近くでもう一組見つかり、二組が合流し4羽になる。
すぐに飛んでしまったが別の2羽もTさんが見つけ、計6羽を同一海域で見つけることができた。波があって、撮影には困難を極めたが、KM夫妻は近距離で見ることができたと、とても喜んでおられた。船長も波がなければ、もっと近くまで寄せられると豪語。
しばらく進んだところで2羽の飛翔個体を見つけ、一応、確認個体が二桁となる。
沖合から一気に北上し、寒くなかったと言えばウソになるが、カンムリが見つかったお陰で、寒さもどこへやら気分で帰還できた。
白浜港に戻ると船の接岸場所でカワウが魚を咥えているのを見つける。カワウも驚いたのだろう、慌てて魚を飲み込み、飛び立った。
ウ類は捕まえた魚を何回も咥え替えて、飲みやすい状態にして飲み込む。あんなに慌てて飲み込んだら、いぎ(山口の方言で小骨や棘のこと)が喉に立ったのではないかと心配してしまった。まあ、命に別状はないだろうが・・・。
(この調査は、セブン‐イレブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、
パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金
を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。
よくあることですが、私の参加できなかった時に、凄い数が出たり、親子連れが出たり、ヒヨドリの大群に出会ったりなどなど、その度に内心悔しい思いをしています。しかし誰しも完璧であることは難しく、できることを粛々と行うしかありません。大相撲初場所で優勝し大関に昇進することになった御嶽海が伝達式の口上で「感謝の気持ちを大切にし、自分の持ち味を生かし、相撲道に邁進してまいります」と述べたと報じられました。私も相撲道を「鳥見道」に変え、そういう心構えで今後も励みたいと思います。私の鳥見は「不要不急」かもしれませんが、カンムリ調査はどうなの? と考えたりします。私は40年以上に渡って福祉労働に携わってきました。現役時代は報われない仕事と諦めていましたが、このコロナ禍でエッセンシャルワークが見直され始めました。確かにブルシット・ジョブ(どうでもいい仕事)の方に光が当たる世の中はおかしいと思いますが、労働そのものを深く考える必要がありそうです。ワーク、ジョブ、タスク、ミッションetc、哲学的な話になりそうなので、これで置きますが、生き方の問題と繋がっているのではないでしょうか。