4月7日(木)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
残念ながら、今回もカンムリを見つけることができませんでした。
概況を記します。
天気:晴れ
調査時間:9:44から14:57まで
調査結果:カンムリウミスズメ 0
アビ類 21羽(撮影した写真からシロエリオオハムと分かる個体もあり)
ほぼ1か月ぶりの調査への参加。前日も、その夜のスポットライト・サーベイでもカンムリは確認できなかったとのことなので、気合を入れてカンムリを探す。といっても、この時期(カンムリの繁殖期)はなかなか手強いが、周辺海域での繁殖確認の手がかりをつかむためには、決しておろそかにできない調査である。
港を出てからしばらくは海も穏やかだったので、遠くまで双眼鏡を駆使して探した。船の前方にカモメ類が浮かんでおり、珍しく船の接近に飛び立つ様子がない。双眼鏡で確認すると嘴に何か咥えている。魚のようだ。撮影した画像で確認するとカワハギの小ぶりな個体だった。でも魚が喉に引っかかって、うまく飲み込めない様子が見て取れる。一旦、飛び立ったが、すぐ近くに着水する。その時に写した画像では、獲物を咥え替えていたので、喉に詰まっていたわけではなさそうだ。しかし呑み込みが難しい獲物を諦めることなく、咥えたまま飛び去った。
その後、どうなったかは分からないが、私のこれまでの観察例では、カモメ類が大きな死んだ魚を食べる時は、突っつきまわして少しずつ食べるので、岩場の上などに運んで「調理」するのかもしれない。
出港後すぐ、沖でスナメリを目撃しただけで、前回、アビ類が多数見られた海域は、もぬけの殻状態だったので、このセグロカモメとの遭遇は、ちょっとした刺激にはなった。
沖合海上を見回っても、あれだけいたウミスズメもまったく見られない。話のネタになるような船舶もなく、祝島の沖合から「平さんの棚田」を撮影した。
島間海域を周回している時、やっとアビ類を見つけることができた。潜水したので一度見失ったが、割合近い所へ浮上したので、何とか撮影できた。撮影した画像にはハッキリとシロエリオオハムと分かるものも撮れていた。この個体、潜水して逃げるのかと思いきや、バタバタと羽搏いて逃げる。しかし、いつまで経っても飛び上がらない。ずっとバッタバタやったままだった。換羽期には飛べなくなるので、身を潜める場所があると聞いたことがあるが、まだ換羽には早そうだし、食べ過ぎで体が重たかったのかもしれない。
そういえばアビ類の撮影画像、水面に首だけ出しているものが多く、体全体が浮いた姿のものはなかった。渡り前なので、脂肪を蓄え、渡りに要するエネルギーを十分補給しているため、体が重くなって沈んでいたり、飛び上がりが困難となっているのではないかと考えれば自分的には納得がいく。本種の繁殖地への移動や越冬地への移動は、飛翔だけなのか、遊泳は伴わないのか。
以前、博多湾の沖でアビ類が長い隊列を組んで移動して行くのを見たことがあるが、いずれにしても飛べない鳥ではないので、ケースバイケースということか。大型の鳥なのでGPSなどの装着は可能だろうから、移動方法を調べることはそう難しくはないのではなかろうか。
叶島近海で船を止め、昼食・休憩に。この辺りは全くの無風で、べた凪状態だった。白浜を出てしばらくはさざ波、島近辺まで来ると地寄りであっても波がある。普通、沖合に出ると波が強まるのだが、この日の沖合は凪ぎと、まったく海況は分からない。船上での食事に弱い私でも、座っている分にはほとんど揺れは感じない程度で、弁当を完食した後、サービスにつけてもらった握り飯までペロリの状態だった。そういえば前の晩、夜中に腹具合が悪くなり、何度もトイレに行く状態だったので、この日は朝飯抜きで来ていたので、よけいに食が進んだのだろう。すっかり腹具合のことは忘れていた。
午後からの調査のコース取りとして、船長が気を利かせて、盛りは過ぎていたが、ヤマザクラが密集している島の北岸に沿って船を進めてくれた。
岩場のてっぺんにミサゴを見つけたので声をかけ、ゆっくり進んでもらうとミサゴは飛び立った。当初は私たちを警戒したのだろうが、そのうち近くにいたカラスを追い払う行動が主になって、私たちが通り過ぎるとまた戻って来た。
田ノ浦付近でウが浮かんでいるので撮影したところ、婚姻色が出始めたヒメウだった。嘴の付け根付近が赤くなり始めている個体だ。
岩礁にウ類がたくさん休んでいる。画像で確認するとウミウの群れにヒメウも交じっていた。船の接近とともにみんな飛んで行ってしまったが、鳥があまり出ていないので、これはこれで嬉しい。
ミサゴの2羽が今季も営巣しているようだ。その後、再び沖合へ出てみたが、鳥の気配が感じられない。航路筋を走っている時、沖合にカモメ類が10羽前後、見られたのと、アビ類が2、3羽、それにウミアイサのペアと思われるものが2組、近づく間もなく飛び去られ、ウミスズメ類はまったくヒットしない。日頃余り行かない島の東側海域も回ってみたが戦果なし。島のてっぺんに止まっているミサゴのペアを見つけ近づいてみたが、近くにいたウ類が早々と反応、すべていなくなり、飛び立ったミサゴとカラスのバトルが見られただけで巣らしきものは発見できなかった。
港に着くまでが調査と自分に言い聞かせながら、再度集中したものの、アビ類が遠くに見られたのみ。白浜港入港前、船のすぐそばの水中をスナメリの子供が泳いでいく。そのうちその子の親と思われる巨体が水面に姿を現したが、カメラを構えるとまったく出てこず、諦めて帰港となる。残念!
(この調査は、地球環境基金、
パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金
を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。