9月27日(月)
カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。ようやくカンムリウミスズメ1羽を確認することが出来ました。
カンムリウミスズメ1羽、ミサゴ1羽
調査時間10時から14時30分まで
今日は朝から風が強い。朝ジョグの時、向かい風に苦労したので大丈夫か船長に確認。何とか出れるだろうとのことでひと安心。
10:00白浜を出港。南からの風を避けて進む。
「岩場に白い波頭が立っとるじゃろ。うねりが高い証拠じゃ。」漁師さんは海岸に打ち寄せる波頭を見てうねりを判断する。
何度このセリフを聞いたことだろう。いつもはパイプ椅子に座って船を操る船長が、今日は立ったまんま足を踏ん張り、四方八方に忙しく目を配っている。双眼鏡を持ち出す余裕もなく、波の頂点から谷間まで一気に滑り下りる感覚はちょうどウォーターコースターさながらである。無類のジェットコースター好きの私はしばしこの快感に身を任せる。
何とか灯台までたどり着き南下しようと試みるが、波が高く船長がコース取りに苦労しているのがわかる。
島の北側を周回し、風が収まるのを待つが一向に気配がない。
「これじゃあ、沖に出れそうにないけどどうする?」船長が振り返り、私の顔を見る。
「うん、いったん、早昼にしよう!」と私。
船の上下運動で体幹を使ったせいか、お腹も空いてきた。
風除けに田ノ浦に入り、お弁当を開く。
「調査の楽しみの8割はこのお弁当じゃ。」と船長。
そうなのだ!そして午前中にカンムリに会えた時のお昼のなんと美味しいこと!!
今日はその楽しみはお預けである。
お弁当を食べながら、遊園地談義に花が咲いた。
なんと船長もジェットコースター好きだったのだ。
お弁当箱を片付けていると上空にミサゴがひらりと尾根を越えて行った。慌ててカメラを取り出したが、時すでに遅しで撮影は出来なかった。
12:00を回る頃、風が少し収まって来たので島方面を目指す。
今日の船長にはどうしても行きたい理由がある。
息子も現役バリバリの漁師なのだが、今時期はメイボハゲ(ウマヅラハギ)漁をやっている。このハゲ漁が瀬戸内海でも数少なくなった伝統漁法なのである。
メイボハゲがユウレイクラゲを好んでエサにする習性を利用するのだ。
以前カンムリ調査の途中でユウレイクラゲにメイボハゲが50~60匹集まっているのを見たことがある。
メイボハゲに食べられたクラゲはボロボロになって海底に沈んでいった。これを人間様が再現する。カサの骨を逆さにしたような仕掛けにユウレイクラゲを入れ、ハゲがつつきに来た瞬間を手の感覚で読み取り、籠を一気に引き上げる。まさに五感を武器の、しかもエコな漁法なのである。
島を周回し、クラゲを探す船長の眼差しは真剣そのものだ。いつもは陽気な船長が「おやじの背中」になっている。
いくら海面に目を凝らしても私には見えないのに、船長はいち早くクラゲを見つけ、タモで掬いやすい位置に船を寄せる。結局、4つゲット出来た。
息子からの宿題を消化して船長に安堵の表情が浮かぶ。
さあて、またカンムリ探しである。
潮目のゴミの帯が続いている。
カンムリは潮目にいることが多いので、注意深く目を凝らす。
すると黒い流木の傍に白と灰色の物体が見えた。
「あれ、なあに?」
と言おうとした矢先、カメラマンさんが叫んだ。
「カンムリだ!!」
双眼鏡で確認すると紛れもないカンムリである!
何とかカメラに収めようと構えるが船の揺れが激しくピントが合ってくれない。
カメラマンさんも苦労している。
撮影しやすいように舳先に位置を代えたとたんに飛び立ってしまった。
「いつもと違って船の揺れでバタンバタン音が凄いけん、カンムリも怖がったんじゃろう」と船長。
ともあれ、8月、9月初旬と会えない日々が続いたので会えただけで最高の気分だ!
カンムリが飛び去った方向に船を走らせてみたが、再会は叶わなかった。
風はいくぶん収まって来たので、カンムリ撮影にトライしたいカメラマンさんは「もう、ちょっと沖に出れないかな?」とカメラマン魂を覗かせ私を振り返る。
調査のコースは風波の読みもあるので漁師さんにおまかせしている。
しばし様子を見ていると、船長が
「今日はこれでおしまいにしてええかね?腰が悲鳴をあげとるんじゃ」と珍しく弱音を吐いた。聞けば昨日からコルセットをはめているという。腰と膝の故障は漁師の職業病と言って過言ではない。船の揺れによる負担、網を引き上げる時にかかる重量など身体を酷使し続けているのだ。
(この調査は、セブン‐イレブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、
パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金
を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。