2023年06月27日
23年6月のカンムリウミスズメ調査報告15-3
2023年06月26日
23年6月のカンムリウミスズメ調査報告15-2
2023年06月25日
23年6月のカンムリウミスズメ調査報告15-1
6月25日(日)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
概況を記します。
天気:曇り
調査時間:9:36から15:23まで
調査結果:カンムリウミスズメ 3
今回もカンムリウミスズメがどのような行動をするのか、距離を保ち、観察&撮影しようというものだ。
この日の海は穏やかで波もさざ波程度、遠くは少し霞んではいるものの視界は悪くない。調査海域は前回ほど浮遊物も見られず、見つけた遠くの怪しい浮遊物も近づくとゴミと分かり、そんなこんな状態が続く中、船首に移動していた映像カメラマンのIさんが前方に何かを見つける。船長さんがIさんの指さす方向へ船を進めると、何とカンムリが3羽いるではないか。出港後、約1時間で見つかったので、時間は十分にある。
いざ、ミッション開始! 船長さんは鳥との距離をほぼ一定に保ち、カンムリの動きに合わせて船を操船する。船首では映像カメラマンのIさんがカメラを回す。私と研究者のTさんは行動観察と撮影を。運の良いことに、見つかった3羽は警戒心が緩い上に、組み合わせも1羽だけ非繁殖羽に近い顔立ちで、後の2羽は換羽途中の中間羽個体だった。
カンムリの自然な行動を観察するため、近づき過ぎないようにしたので、ピントの合った画像という点では、歩留まりの悪い結果とはなったが、これまで撮影することができなかった生態の写真をいくつかものにすることができた。
今回観察した行動で一番多く見られたのは、水中を覗き込みながら移動する行動である。その行動には成鳥と思しき2羽と幼鳥と思しき1羽では覗き込む頻度に明らかに違いがあった。幼鳥と思しき個体は明らかに他の2羽の動きを見ているようで、ほとんど水中を覗き込むことなく、前、後ろになりながらも一緒に泳いでいる風だった。急に成鳥と思しき個体の1羽が潜水を始め、素早い動きで何かを追っていくような行動を開始すると、他の2羽も同様の動きを見せる。
こうした行動は観察中、そう多くはなく3〜4回くらい見られただけだったが、そのうち2度ほど船のすぐ縁まで潜水してやってくることがあった。しかし、息継ぎのため一瞬浮上するものの、またすぐ潜るので、近距離であっても写真に収めるのは至難の技。それぞれが探索行動に夢中になっていて、他の個体と離れると1羽が声を発し、そのうちまた3羽が合流するというシーンも見られた。
探索や採餌行動が一段落すると、3羽がまとまり羽毛の手入れを始める。全個体が一斉にということは極めて少なかったが、お互いが近接するのは整羽行動のような無警戒になる行動は誰かが異変に気づける状況の中で行う方が安心感があるからだろう。3羽と群は小さいが近くに他個体がいることで、周囲の警戒に割く時間が1羽でいる時の3分の1で済むわけだから納得できる。
整羽中、期待していた頭かき動作は見られなかった。他の鳥もよくする頭部を反転させ背中側に頭をこすりつけるような動作が見られたので、頭部の羽繕いはこの程度で良いのかもしれない。
他には緊張感が緩んでいる時に見せる行動として伸び(ストレッチ)も見られた。足を伸ばす、翼を伸ばす(広げる)行動などである。翼を広げる行動は潜水後の羽搏き行動と形は同じだが、行動の流れを見ているとその違いは分かる。
これまでずっと気になっていたカンムリの瞬膜について、水中を覗き込む前後の画像を詳しく見たが、瞼を半閉じにしたようなものは、これまで同様撮れていたが、瞬膜が眼を覆っているようなものは一枚もなかった。
その他のこととして、『新 海鳥ハンドブック』では、幼鳥には「冠羽はない」と書かれているが、今回見られた幼鳥と思しき個体は短いながらも冠羽があった。
冠羽を立てている時といない時、ほぼ同時に撮ったビフォー・アフター写真もあるが、本当に確かめられた知見なのかと、思わざるを得ない。これまで観察された時期、換羽の進行状況、小群の構成(ペア、家族群)などの状況証拠で成鳥。幼鳥の区別や識別の参考にしてきたが、ますます謎は深まるばかりだ。
あと一つ、カンムリの近くにサメが近づくというシーンがあった。カンムリに動きはなく、サメも捕食行動を見せることなく消えたが、繁殖期以外の時期のカンムリにとっての捕食者も気になるところではあるが、1m内外のサメは脅威ではないようだ。
結局、この群れは最初に見つけた場所から直線距離にして約2.5キロ北上しただけで、ほぼ同一海域で行動していた。こうした行動は、今回のように穏やかな海況だったからなのか、また別の個体ではどうなのか、カンムリの出現状況をにらみながら、今後の調査方針を考えたい。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。