12月27日(火)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
本年最後となる調査でしたが、私にも遅れたクリスマスプレゼントが届きました。
概況を記します。
天気:晴れ
調査時間:9:47から14:37まで
調査結果:カンムリウミスズメ 8(2+2+4)
前回の調査が今年最後と思っていたが、天候が回復し、急遽、実施が決まった。支度だけは最大限の防寒対策をして臨んだ。今年の1月に雪の北海道でワタリガラスを探すツアーに参加した時と同じ仕様の服で固めた。
先日までの大荒れの海況とはうってかわって波は静か。港を出ると海面に浮かんでいたウが船の前から慌てて飛び立つ。
横島を過ぎてすぐ、右舵にも左舵にもスナメリが出る。見通しは悪くないが、四国や九州は霞んでいる。天気は穏やかで日差しもあるのに、船の進行に伴う風が冷たく、万全の防寒装備でも寒いと感じる。
宇和島近くに来て、やっと島の上空を舞うトビを目にした。白っぽい鳥が木に止まっているのが見えたので、双眼鏡で確認したところノスリのようである。
島沿いに進んでいる時、鳥の群が遠くに見え、ヒヨドリの群れだと分かる。この時期に渡り? 冬場に島間を移動する「島渡り」と言われるものはあるが、これほどのまとまった数が海上を移動しているのは初めて見た。一旦九州方面に渡ったものが再度本土へ向けて移動しているような、いわば「逆渡り」かもしれない。ツバメの渡りでは、よくあることらしい。
研究者のTさんを調査地に降ろした後、先ほど木に止まっていた猛禽類の確認に行くと、姿はなく、山頂付近をトビに混ざってノスリが飛んでいたので、おそらく、止まっていたのは、そのノスリだろう。その後、沖合へ向け船を進めると、遠く八島に浮島現象が見られる。
しばらくすると前方から向かってくる船の航跡波が蜃気楼のように浮かんで見え、近づくにつれ漁船の船影だと分かった。陸では陽炎のような現象なのかもしれないが、海でもいろんな自然現象があっておもしろい。
11時前に配られた最中を食べた後、前回、私の調査グッズのGPSの電源が突然切れるというハプニングがあったので、動作確認をしていると、船長さんが「そこにいる!」と声を上げた。すぐに潜るので種の同定ができない。その後も、水面に現れるのは一瞬で、何とかカンムリとは分かったものの、その姿をカメラに収められない。落ち着いた2羽が浮上したのもつかの間、まともな写真が撮れないまま、飛び去られてしまった。警戒心の強いペアというより、採食に夢中になっていて、一段落して浮かび上がると近くに船がいたというところではないだろうか。
船長さんは「これで安心して正月が迎えられる」と喜んだが、私にとっても8月以来の出会いなので、やっとトンネルを抜け出せたという感慨深いものであった。また、この日の調査は、年明けに予定しているカンムリの観察会のための予備調査としての意味もあったので、二重の喜びでもあったのだ。そういえば8月の個体は非繁殖羽だったから、いきなり繁殖羽の個体を見たわけで、ことの意味を考えられたのは陸に上がってからだった。
浮き浮き気分で船を進めていると、Mさんが「あれ!」と前方から飛んでくる鳥を見つける。飛翔形態からウミスズメ類だとすぐに分かった。双眼鏡で確認するとカンムリのペアだった。前の2羽の飛んで行った方角とは違うので、別のペアだ。飛翔個体ではあるが、ハッキリとカンムリだと確認できたので、目撃地点の緯度経度を船長さんに読み上げてもらい、Mさんが記録する。
西向きに船は進み、突然止まった。「お昼にしよう」と船長さんが言う。食べ始めると前方を大きめの鳥の群が通り過ぎた。配色の具合からアビ類に思えたが種を確認できなかった。すると今度は反対側へ小ぶりな鳥が飛んできて近くに着水した。何とその鳥はカンムリで、4羽もいる。こんなことってあるのだろうか、さっきの2羽、2羽が合流して飛んで来たのだろうかとか言っているうちに、すぐに飛び去ってしまった。
鳥をあてもなく懸命に探し回っている私たちの所へ、鳥の方からやってきてくれるという、これまでにない経験をしたからか、船長さんは「来年から調査方法を変える。沖で船を止め、流れに任せて鳥を待つ。燃料代も助かるし」と、カンムリ効果で口も軽い。
一応、いつものようにお茶うけに御堀堂の外郎を配ったが、カンムリが出ると出ないでは、まったく話の弾み方が違う。午後の調査は、既にカンムリを見つけているので、みんな気楽な心持ちでの開始だった。
船が祝島沖にさしかかった時、眼前をヒヨドリの群れが通り過ぎ、祝島・鼻繰島間海域に消え去った。撮影した画像で羽数を数えると100羽前後の群だった。宇和島沖の群は150羽を超えていた。実際に数えると見た目の約、倍の数だったのには驚かされる。
お迎えの調査地へ向かっているとホウジロ島の上空をミサゴが2羽飛び回っていた。宇和島ではウミウが岩の上で休み、調査船の上をトビが舞っていたが、研究者のTさんを乗せてからは、これといった鳥は出なかった。
船が白浜港に入る前、船を追い越していく鳥の群がいたが、大きさや体色からウミアイサのようだった。港の防波堤で休んでいるウの中に綺麗な繁殖羽になった個体も見られた。
年の瀬になって、やっとカンムリが出てくれ、よかった、よかったで一年を締め括れたことは、船長さんを始め、研究者のTさん、そしてさまざまな協力者の皆さんのお力添えがあってのことと感謝申し上げたい。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。