10月1日(土)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
前回の調査で1羽見られているので、淡い期待を持って臨んだのですが、カンムリを見つけることはできませんでした。
概況を記します。
天気:晴れ
調査時間:9:30から15:25まで
調査結果:カンムリウミスズメ 0
乗船前、研究者のTさんと、カンムリは期待薄なので、ヒヨドリの渡りやハチクマの渡りに期待した方がよさそうだ、アカエリヒレアシシギでもいてくれたらいいね、と話していた。お互い、調査なので期待の鳥がでないこともあることは十分承知の上での参加だが、何かしらの期待というか、予測のようなものを頭の片隅に入れているものである。
予期せず、そうした渡りの鳥が近くで見られれば、それはそれでラッキーだが、そうした予測を頭に入れているといないとでは、その日の鳥の探し方にも影響がある。島々の尾根筋に注意するとか、時々は空にも注意を払うとか、探す鳥によって観点が変わってくるのである。ということで、出港後、しばらくは長島の尾根筋を繰り返し、くりかえし確認した。ヒヨドリやハチクマの動きはないか確かめるためである。Mさんの話では、前の日に白浜港の裏側でヒヨドリの群れを見たそうなので、この時期は要注意なのだ。
しかし当たりは一向にない。島の磯に佇むアオサギが1羽、
黒っぽいものが磯にいるので双眼鏡で確認したら、こちらは釣り人だった。そのうち手を振ってくれたので、船長さんのお客さんと分かる。その後も海上では着水したウミネコや遠くを飛んでいるウミネコと思しき鳥ががポツリ、ポツリの状態。波は僅かにある程度で、さほど気になるものではない。
沖で久しぶりに船首にブリッジ(操舵室)のあるコンテナ船を見つけたので撮影。島方面へ進んでいる時、左手に黒っぽい塊が見えた。どうもヒヨドリの渡りのようだ。「ヒヨドリの群!」と声を上げるが、すぐに見失う。適当にシャッターを切った1枚に、薄っすらと群が写っていた。条件は良くなかったが、この日の狙い目の一つがゲットできた。
ハチクマは、春の渡りでは、以前報告したように、九州方面から海を渡って来るレアケースもあるが、秋の渡りでは、この辺りではほぼ陸路を移動するので、沖合では期待はできない。あと期待できるのはアカエリヒレアシシギだけだ。海上でウミネコの小群が見られた。岩場で休んでいることが多いが、なぜか岩場には1羽もいない。沖合に浮遊物の多い海域があったので、丁寧に探すも鳥は見当たらない。
11時前、船上でおやつが配られる。一口サイズのチョコで、商品名は「ミニビットアソート」、5種類(ミルク、ストロベリー、アーモンド、クリスピー、ウエハースの5種類)の味が楽しめる。欲張って5種類全部を1個ずつとったのが裏目に出た。この暑さの中、ポケットに入れておけば、溶けてしまいそうなので、次から次に食べる羽目に。小腹がすいていたので、食べる分には問題なかったのだが、やはりチョコレート。食べ終わると鼻血が抜けるのではという感じになってきた。子供の頃、ピーナツチョコが止められなくなって、1袋全部食べてしまい、鼻血を出した経験がある。そんな気分だったのである。
沖合海上でも、ウミネコの飛翔個体を2、3羽見かけただけ。沖合は波も静かでかなり遠くまで見渡せたから、本当にいないのだろう。沖合を進んでいる時、前方から1羽の鳥が飛んできて、右舷を通り抜け後方へ飛び去る。研究者のTさんは「カンムリ!」と声を上げたが、私は確信が持てなかった。これまでカンムリの飛び去る姿は度々見ているが、前方から来る姿は見たことがなく、色合いがやや褐色味を帯びていたように感じたのと、羽搏きの雰囲気がウミスズメ類とは違ったように見えたからだ。結局、研究者のTさんも「不明鳥」ということで、カンムリの飛翔1羽とはしないという結論を下した。写真の1枚でも撮れていたら、話は違っていたのだが・・・。
沖合で船を止め、お昼にすることに。前回目論見が外れたニコニコ亭の弁当の撮影が食前のミッションとなる。今回も500円とは思えない豪華さである。食後のお茶うけは、前の日に小郡の土用山でのハチクマの渡りの観察に行った帰りに買い求めておいた「ふしの屋の五色饅頭」、狙い目の「小吉饅頭」が売り切れており、仕方なく買ったものである。ふしの屋は、界隈では有名な蕎麦屋であるが、先代が蕎麦と饅頭(蒸し饅頭)をそれぞれ別のところで修行して、「二刀流」で商いを始めたもの。今は奥さんや息子さん、娘さん夫婦で跡を引き継いで店を切り盛りしている。代が替わって味が落ちたという人もいるが、私はそれなりにクオリティーは維持されていると思っている。
停船した辺りは、浮遊物の浮かぶ潮の止まった海域で、揺れもないが、風もなく、暑さが堪える。日よけは9月から外しており、直射日光がまともに当たるのだ。お腹の方はまだ落ち着かないが、暑さに耐えかねて、午後の調査を開始する。やはり船が動き出すと、暑さは余り感じなくなった。しばらく浮遊物の多い海域を丁寧に見当たる。長い竹が1本浮かんでいたり、木質系のものが目立つ。台風の置き土産であろうか。波はほとんどないので、180度、遠くまで見渡せるものの、鳥の出は相変わらずである。前回、1羽見られたという海域も見回るが、気配なし。
この日は浮遊物の浮かんでいる海域があちこちにあり、その都度、注意深く探すのだが、カンムリどころか、そうしたゴミの中に鳥自体がいない。島を周回時、上空にトビ、警戒して飛び立つミサゴ、イソヒヨドリやアオサギ、今回はクロサギが見られた。2羽いたようだ。ミサゴの1羽は、趾に魚を掴んで飛んでいた。
撮影した写真で確認すると、ダツという魚のようだ。この写真だけは上手く撮れた。クロサギは不意を突かれて、ピントが上手く合わず、ボケボケの写真しか撮れなかった。
余りに鳥が出ないので、船長さんが恩情から、島周りを走ってくれたようだ。おかげで、船や風景の写真と弁当の写真しかないということだけは免れた。蒲井の岩場で瀬渡しのお客さんを拾って、次のお客さんを迎えに行く時、船の両側にスナメリが群れで現れた。
サービスよく、何度も背中を見せてくれたのに、結局、ピントを合わせ切らず、雰囲気写真が1枚撮れただけだった。でも体を3分の2以上出してくれ、雰囲気はよく出ているのではないかと思う。
港に着くと、いつものように波止場でウミネコが出迎えてくれた。瀬渡しのお客さんも私たち同様、余り良い釣果ではなかったそうだ。船長さんは、「潮がどうのこうのと言い訳ばかりする」と言っていた。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。