10月22日(土)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
今回も、カンムリを見つけることはできませんでした。10月の調査は、3連敗です。
概況を記します。
天気:薄曇り(時々晴れ間あり)のち晴れ
調査時間:9:38から15:06まで
調査結果:カンムリウミスズメ 0
送迎の車が白浜港に着くと、ちょうど町長選に出馬した原発建設反対派の候補者が港の中に停泊した船から住民に訴えかけているところだった。波止場には運動員として来られていた見知りの顔もあったが、途中、道の駅に寄り道をしたので、出発時間に遅れないように調査支度を急いだ。私たちが船に乗り込むころには、候補者の船は次の予定地に向かったようでその姿はなかった。
船が港を出ると、結構波があり、船が揺れ、波しぶきも時折かかる。そうした海況だったからか、いつもより船は地寄りを走行。とても双眼鏡で周囲を見回せる状況ではないので、目視で鳥を探すことにした。しばらくすると少し波は穏やかになってきたが、相変わらず、船は上下動を繰り返している。擬態語で表現するならば、「どんぶらこっこ どんぶらこ」という感じ。
天田島の上をトビが2、3羽舞っていた。それを眺めていると、上空を旅客機が通過して行った。時間的に、前回目撃したJAL便と思われる。沖合へ進もうとすると、また急に波が高くなってきた。それが不思議なことに沖合に進むにつれ、波が穏やかになってくる。おかげで遠くを航行している船首にブリッジのあるコンテナ船を撮影できた。風向きや潮の干満で海域ごとに海の様子が変わるのには何時も驚かされる。
これまで見られた鳥は天田島のトビ以外では、ウミネコが遠くを飛んでいるものを含めて6羽と極めて低調。前回配られたおかきの残りを1袋、小腹がすいたので食べたが、何か物足らない。そのうちいつものようにお菓子が配られたので助かった。ソフトな生地にチョコが巻かれたお菓子(チョコかりんとう?)は袋から出すとチョコがべちゃべちゃになりかけていたので、慌ててもう一袋もほおばった。前回、おかきを食べ過ぎて失敗しているので、ちょっと考えたが、せっかくの配りものを台無しにするよりはいい。
沖合も、しばらくは波が穏やかだったが、そのうち横波を受けるようになり、横揺れがだんだんきつくなってくる。沖合を走っている時、台船を押しているタグボートが目に入る。タグボートは曳き船にも押し船にもなるんだと、改めて感心した。

その後もウミネコの飛翔個体を2羽見ただけで、八島港へ入港。入港直前、島から飛び出したカワウを撮影したが、絞りの補正ダイヤルが動いていて、白飛びした写真になってしまった。久しぶりに陸に上がっての食事、天気もよかったので、待合室には入らず、外のベンチに腰掛けて食事を摂った。ニコニコ亭の弁当の写真をこのところ撮っているので、「今日は?」と皆から促される。1回目は、ミッションとして撮影したが、前回はおまけ、今回は何と呼べばいいのか。とりあえず写して食事にかかる。
この日の自分に課したミッションは、せっかく島に上陸したのだから、旬の鳥、つまりジョウビタキの渡来を確認して撮影することだった。食事を済ませ、いつものようにお茶うけを配る。この日は私の推しの一つである山口銘菓・山陰堂の「舌鼓」、「求肥の皮と餡の境が口の中で区別できないほどの『渾然一体』感、銘菓というに相応しい一品だ。」と言いながら、ゆっくり味わうことなく、ミッション開始。
海岸通りを耳を澄ませて注意深く歩く。この鳥の見つけ方は、「ヒッヒ」、「カッカ」という地鳴きが聞こえたら付近を探す。また、この鳥は目立つところに出て来る鳥だし、この時期、冬の縄張りをめぐっての追っかけ合いなどもあり、居れば見つけるのはそう難しくない。しばらく歩いていると、怪しい鳥が草むらに飛び込んだ。近くを探すと、そのうち飛び出し電線に止まる。まだ渡って来たばかりだからか落ち着きがない。オスだったが逆光でバッチリ写真が撮れない。

近くでモズの「キー、キー」という声がするので、探すと電柱に止まっていた。こちらも旬の鳥だ。「モズの高鳴き」といって、冬縄張り確定のために高い所に止まって鳴くのである。

ジョウビタキのメスも近くにいた。

イソヒヨドリも綺麗な囀りを聴かせてくれる。ヒヨドリも騒がしいが、渡りの群ではなさそうだ。
海の鳥はサッパリだったが、陸の鳥で埋め合わせができたし、ミッションもそれなりにこなせたので、まずは一安心。食後の散策というより、かなり本気を出した鳥探しになったが、船上で食事を摂ってすぐに調査再開という流れに比べれば、わずか1時間弱の滞在とはいえ、ゆっくりできた感じがした。船長さんも久しぶりに出会った定期船の船長さんとの会話が弾み、いい気晴らしになったのではないかと思う。
午後からの調査も相変わらずの波で、斜め前方から波が押し寄せるため、上下、左右に揺れて、「ゆっさ、ゆっさ、どんぶらこ」という感じ。船べりに一匹のフナムシを見つける。午前中はいなかったので、島に船を着けた時に乗り込んだのだろう。本土へ渡った「密航者」は、違う個体群に加わって、遺伝子の多様性に貢献するのだろうかと、つまらない考えをめぐらす。

その後も時折、飛んで行くウミネコを見かけただけでカンムリの姿はない。雰囲気としてはべた凪の時よりは出そうな気はするのだが、ヒットしない。祝島近辺から内海に入ると急に波は穏やかになった。走っていると、長島方面にヘリコプターが2機飛んでいるのを船長さんが見つける。研究者のTさんが「戦闘ヘリ?」と声を上げる。飛行機の所属を示すようなマークも見えない。撮影した画像を精査したところ、かすかにUSAF RESCUEの文字が読み取れた。米空軍の救難(正確には戦闘捜索救難)ヘリと分かる。詳しく調べるとHH−60Gペイブホークとういう機種のようだ。なぜ、そんな軍用ヘリが飛んでいたのか。米軍機が墜落したとか機体の一部が落下したとか事故でもあったのだろうか。謎は深まるばかり。
叶島ではミサゴは見られたものの、高い確率で見られるクロサギはいなかった。時間も2時を回っており帰港することに。長島沿いに進んでいると室津半島側にウミネコが20羽くらい着水している海域があった。船長さんはヤズがたくさん湧いているのだろうと言っていたが、ウミネコはヤズサイズの魚の捕食は難しいだろうから、ヤズが小魚を追いかけると、そのおこぼれにあずかられるのかもしれない。
カンムリとの出会いは叶わなかったが、久しぶりに違ったコースを見回ることができたのはよかった。白浜の港では定番のウミネコの出迎えはなかった。先ほどの海域に出張っていたからだろうか。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。