2022年09月16日

22年9月16日カンムリウミスズメ調査報告2

9月16日(金)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。

残念ながら、カンムリとの出会いは、ありませんでした。

概況を記します。


天気:晴れ(薄曇り気味)

調査時間:9:39から15:32まで

調査結果:カンムリウミスズメ 0



大型台風接近前のつかの間と言ってもいい海況の良いこの日、厳しい残暑の中での調査である。カンカン照りを覚悟していたが、思ったより雲が多く、晴れというより薄曇り気味の天気。波もさざ波程度で、場所によってはべた凪というところさえある。カンムリの出現率の低いこの時期は、我慢の調査と言ってもいいだろう。他の鳥もあまり期待できないし、報告書の話題にも苦労する。

航行中、遠くに着水したウミネコも見られたが、船の揺れもあって、証拠写真も満足に撮れない。何とか沖で海上に浮かぶ大きな発泡スチロールの塊の上に止まっているウミネコ1)のピントの甘い写真を撮るのがやっとだった。


ウミネコ220916.jpg


沖合海上を進んでいる時、水面ギリギリのところを羽搏きながら飛ぶオオミズナギドリを見つける。やはり名前のように水を薙いで飛ぶ姿がこの鳥は似合っているが、ソアリングできるだけの風が吹いていないので仕方ない。近くに同種の群がいないか探したが、1羽だけのようだった。行方を追っていると、小さな鳥が沖合から飛んできた。ツバメのようだが1羽で洋上を渡っているのだろうか。

沖合は少しうねりがあって、見落としがありそうだが、かなり丁寧に探しているので、やはりカンムリはいないようである。


沖合より220916.jpg


前回の週末の調査でも見つけることができなかったようだし、手強いというか、いないものはいないという感じだ。沖合から地に向けて進み始めると、波はなくなり、べた凪状態に変る。食後ではないのに眠気がさしてくる。いいタイミングで配られたケーキ菓子で何とか睡魔とおさらば。

島近辺の岩場に数羽のウミネコの群が休んでいるのが見える。他島に近づくと岩場からアオサギが飛び立つ。カワウも1羽、飛び去る。前回、見られたというクロサギを探すが、どうも近くにはいないようだ。上空をトビが舞っている。トビを見上げていると、空高く飛行機が飛んでいるのを見つけ、話のタネに撮影する。

島の裏側に回るとミサゴが2羽、次々に飛び出す。磯から飛び立ったアオサギが山中の木に止まり、我々の動きを窺がっている。


磯から山中へ退避したアオサギ220916.jpg


岩場のカワウを遠目に撮影して、午前中の調査を終了。

田ノ浦沖に停船して、昼食・休憩。鳥は出ないし、話題もないので、ニコニコ亭の弁当の写真を撮って話題提供をと、船上で報告書作成の作戦を考えていたのだが、当てが外れる。この日は当のニコニコ亭が法事でお休みとのことで、某安売りスーパーの弁当だった。そんなことを皆に話していると、しばらくは弁当の話題で盛り上がった。そのうち話題は近づきつつある台風の話に。船長さんが自分が一番、今回の台風を心配していると思っていたが、若者がこの週末、結婚式を予定していて、屋外での「花婿・花嫁道中」のような企画(参進の儀)があるらしく、一生に一度のことなので、船長さん以上に心配していると言っていたとのこと。弁当が思ったより軽めの量だったので、お茶うけに配った柳井銘菓、ひがし屋の「翁あめ」も抵抗なく口に入れることができた。

いつものようにゆっくりすることもなく午後の調査を開始。船を進めるが、鳥の気配なし。西方海上で潮目に浮遊物がたくさん見られたが、ここでも鳥の姿はない。沖で大きなナブラが立った海域があったものの、近くに鳥影はなく、こんなに餌があるのにどうしたことかと首を傾げる。


ナブラが立つ2200916.jpg


午前中より更に沖合へ船を進めてみるも、カンムリはヒットせず、午前中の個体と思われるオオミズナギドリが1羽見られただけだった。沖合に進んでいる時、遠くに複数羽の小さめの鳥らしきものを見つけたので、「11時の方角!」と声を発し、船を寄せてもらうが、結局、見失う。もう少し近ければ種の同定もできたのだろうが、こればかりはどうしようもない。

その後も、近くに着水していないかと注意深く見回したが、二度目はなかった。カンムリだったかどうかは別として、内心、今回、カンムリはダメでも、アカエリヒレアシシギの渡りの群を見つけたいという思いもあったので、アカエリかもしれないというレベルの裏付けもとれず、とても残念な結果であった。

引き続き最後の最後まで、凪いだ海面を遠くまで見渡し続けたが、戦果なしの寄港となる。白浜港では、我々を出迎えてくれたわけではないだろうが、愛想のないアオサギが船着き場から1羽飛び立った。



(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



________

1) ここで紹介する画像は〈海洋プラスチックごみ問題〉の悲しい現実です。海上におけるカンムリウミスズメ調査中には、浮遊する多数の〈プラスチックごみ〉にも遭遇します。上関の自然を守る会では様々な団体と共同して〈ビーチクリーンアップ〉と〈ビーチコーミング〉活動に取り組んでいます。


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2022年09月12日

22年9月11日 ナメクジウオ&生き物観察会参加者感想

2022910日と11日。ナメクジウオ調査及びいきもの観察会。

10日は天田島、11日は長島田ノ浦。

講師 佐藤正典さん、新井省吾さん


11日について。

参加者約23名。


午前10時よりマルゴト博物館にて、佐藤先生のスライドによる事前学習。

田ノ浦は、生物学的にも、地理的環境を考える上でも、重要な地点であることを学ぶ。


22091101.jpeg


車移動の海岸班と、ダイバーを含む船移動の海上班に別れて、現地へ。


まだまだ夏のような青い空と青い海。祝島やハナグリ島も鮮やかに見える。

ちょうど、ナメクジウオのような形をした白雲もすらりとたなびいている。

なんだか幸先良さそうな雰囲気。

海岸班は12時半過ぎに、田ノ浦へ到着。まずは木陰でランチタイム。

海上班の船はすでに到着し、二人のダイバーは、海底の湧水が湧き出る白砂層の一角で

ナメクジウオ生息調査のための砂を採集しているのが見える。

昼食後、さっそくいきもの観察へ。


22091103.jpeg


昨夜は中秋の名月。そのおかげでちょうど大潮の干潮時で、

砂干潟と磯干潟の両方の特性を併せ持つ、この珍しくも貴重なここ田ノ浦の生き物観察会には最高の状態が整う。


まず、ダイバーが届けてくれた砂袋を丁寧に開くと、

さすが佐藤先生。小さなしっぽを発見。掬い出すと第一号のナメクジウオ。

さらに何度かの選り分けののち、合計大小6個の個体が現れ、

そのたびに歓声が上がる。

「俺たちみんなここで元気に生きてるよ!」と、

佐藤先生や私たちに言ってるかのようで、最高嬉しかった。


22091107.jpeg


ナメクジウオ。ナメクジにあらず、魚でもない。

私たち脊椎動物の祖先のさらにその前の脊索動物。

目はない、背骨の代わりに脊索と呼ばれるものがある。

生物進化の過程を如実に見せてくれる。

またこれが生息できるということは環境的に見ても、

太古からの自然が連綿と続き、とても清らかな場所であるということ。

新井先生の長年の調査によれば、島に降った雨が地面に染み込み、

そのまま地下湧水となって、田ノ浦の入江の海底から海水と混じりながら

湧き出てくると場所ということだ。

なるほど、

田ノ浦の海水温はなんだかちょっと低いし、

一般的な海水の苦々しいしょっぱさはなくて、飲めるほどのマイルドな塩味。

(美味しい、と感じられる)

おそらくそういう場所は各地にあったはずだが、

護岸工事や、道路整備のために、山や陸からのつながりが失われ、

まずしい生命環境になってしまっている。


さて、参加したお子さんたちも嬉々として続々いきもの発見。


22091105.jpeg


初めて見るような、稚魚の群れ、貝、カニ、ゴカイ、イソギンチャク、ウニ、

それに海藻に偽装してる摩訶不思議な形態のウミウシ・・・。


22091118.jpeg


動いてる、動いてる。佐藤先生によるれぞれの生き物の習性を

楽しくわかりやすくしかも詳しく説明していただき、

生物多様性のホットスポットであるこの田ノ浦の重要性を再認識した。


22091104.jpeg



姿を見せてくれた生き物たちを元の海に返して、会を終了した。

「元気でね〜。またくるよ〜」



この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金 を受けて行いました。 (敬称略:五十音順)




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2022年09月11日

22年9月のカンムリウミスズメ調査報告1

カンムリウミスズメ調査についてご報告いたします。


2022年911()実施

天気:快晴

調査時間:9:37から14:30まで

カンムリウミスズメ0羽 クロサギ2羽 キクガシラコウモリ8


調査内容:

台風明けの好天に調査を実施。同日にナメクジウオ観察会イベントが開催されていたため、船長含め3人のみで調査に出た。

出港後さっそく、島にあるコウモリがすむ洞窟へ。上陸したTさんに聞いたところ、キクガシラコウモリが8羽確認されこれまでの調査で一番多い記録だった。

島から出発し海鳥調査を本格始動したが、東の風の影響で立つ波のせいでカンムリウミスズメを見つけるには苦労しそうな海況だ。30分ほどが過ぎても海鳥は確認なし。

気持ちを切り替え他島の鳥類相調査に向かうと遊漁船が20隻ほど集まって何かを釣っていた。


220911ヤズ漁.jpg


秋に上関周辺で湧くワカナ・ヤズ(ハマチの出世前の呼び名)を狙っていると船長さんが教えてくれた。

島を周っているとクロサギを発見。ゆっくり船を近づけるとクロサギ2羽が飛んでは止まり、息ぴったり繰り返している姿からもつがいの可能性が高そうだ。

昼食直後、上空には大分方向に南下する鳥の群れを発見。


220911アオサギ.jpg


Tさんが望遠カメラで確認したところ、アオサギ14羽の群れの島渡りではないかと。アオサギは港や船で漁師や釣り人のおこぼれをもらうイメージが強かったため、陣形を組んで飛翔する群れは迫力があった。

その後は向かい風のなか船を進めても一向に海鳥には出会えず、残念ながら調査終了。カンムリウミスズメは0羽だったが、快晴に恵まれ無事に調査を終えることができた。



この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



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