2022年09月26日

【鳥の散歩道6】バイオミメティクスって言葉、ご存じですか?


『岩波生物学辞典(第5版)』によると、「生物のもつ構造、機能や運動を工学に応用して役に立つものを作り出すやり方、目的により、どの生物の、どのような機能を使うのかが異なり、対象とする生物を忠実に作り出すのではなく、生物の構造、機能や運動を利用する」ことだそうです。

生物模倣技術と呼ばれることもあり、新しい技術開発やモノづくりに生かされています。皆さんもよくご存じの「マジックテープ」は、「ひっつき虫」と呼ばれるオナモミの種子の表面の棘が毛につくことをヒントに作られました。

鳥に関して言えば、新幹線のパンタグラフの騒音を低減させるため、静穏飛翔のできるフクロウの羽の形状がヒントになりましたし、トンネルドンと呼ばれるトンネル微気圧波への対策として新幹線500系車両の先頭車のノーズの形状は空中から水中に小魚を捕食するためにダイビングするカワセミの嘴から頭部にかけた形状が参考にされました。

また鳥の翼の機能も航空機に活かされています。大型の鳥が翼の先(初列風切外縁部)を上方にそり返して飛んでいることがありますが、皆さんも主翼の先端が上にカーブした旅客機を見たことがあると思います。


ミサゴの飛翔形(上関海域).jpg



カツオドリの飛翔形(小笠原航路).jpg


これはウイングレットと呼ばれ、空気抵抗を減らすことで、燃費の改善に役立っています。

その他にも鳥の羽毛の色彩、なかでも金属的な光沢を放つ色彩(色素によらない発色で構造色と呼ばれる)を利用した製品も開発されています。このように自然から学んだものが多数あるのです。



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2022年09月24日

22年9月のカンムリウミスズメ調査報告3

9月24日 カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。

台風14号が吹き荒れ15号も控えている中でピンポイントの調査でした。

概要を報告します。


天気:晴れ

調査時間:10:28から14:44まで

調査結果 カンムリウミスズメ 1羽

     シギ類飛翔 4羽

     ミサゴ 1羽

     アオサギ 3羽飛翔

     ウミネコ 100数羽


10:08 白浜港出発。途中、ウミネコを4ヶ所で計6羽(成鳥4羽幼鳥2羽)。

11:07〜11:10 カンムリウミスズメ非生殖羽個体1羽。


220924カンムリ.jpg


11:12 島の北東側岩礁上にウミネコ11羽(成鳥8羽幼鳥3羽)。

11:24 上空にトビ1羽。

11:42〜11:48 祝島の南東海上にウミネコ約90羽が広く散開する。

12:02〜12:08 餌をつかんで飛ぶミサゴ1羽、


000924ミサゴ.jpg


アオサギ3羽の飛び立ち、ウ類1羽の飛び立ち、イソヒヨドリ1羽のソング1)を観察。

12:08〜12:51 昼食。その後、途中でウミネコを2ヶ所で計2羽飛翔。     

13:31 シギ類4羽飛翔。その後、途中でウミネコ成鳥1羽飛翔。  

14:44 白浜港到着。



船上で昼食を摂りながら会話がはずんだがTさんから2つのことを学んだ。

その一つは宮崎・高知県沖で繁殖したカンムリウミスズメは個体例が少なく全部?ではないが、装着したロガーを回収すると夏場は大きく二つのエリア

@北海道沖・沿海州グループとA朝鮮半島近くに移動していることが分かった。したがってこの時期、非繁殖羽の確認はまれであるが、上関では毎年確認でき、1年間を通して換羽の変化を見ることが出来る。カンムリの生態系を知るうえで貴重な場所である。

そして箕輪義隆著の「新海鳥ハンドブック」2)を開いてくれた。

カンムリウミスズメのページでは1年間見ることが出来る地点として上関町周辺が緑で著色してあった。これまで地道な調査に参加した一員?として、その成果が反映されており感慨深かった。その二つ目は繁殖地調査について話がはずんだ。

今日の調査メンバーはたまたま4月に実施されたスポットライトサーベイと同メンバーで何とか繁殖地を見つける方法はないか。そのためには人手もお金も必要だし今後の検討課題となった。

私は繁殖地が身近に見つかれば、いつでもカンムリに会えるし、すごいことだと思っていたが、Tさんは「繁殖地が見つかれば、ネズミ、カラスなど天敵からカンムリを保護できる。」と一言。この言葉に自分の中で全く保護の観点が欠落していたことを痛感。



(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



        

1) さえずり

2)「新海鳥ハンドブック」箕輪義隆著 小田谷嘉弥監修 2020




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2022年09月21日

高木仁三郎市民科学基金クラウドファンディングのご案内

平素は上関の自然を守る会の活動に、ご理解とご協力をありがとうございます。

この度、高木仁三郎市民科学基金のクラウドファンディングをご案内いたします。

科学的根拠に基づき、社会問題の解決を探る市民活動を支援する高木仁三郎市民科学基金(以下、高木基金に略)によるクラウドファンディングが22年9月2日から始まり、最終日は10月20日となります。

高木基金・市民科学者・市民のつながりを広げるクラウドファンディング

https://congrant.com/project/takagifund/5103


当会発足の1999年から資金調達の目途が立たない中、高木基金の援助により市民と専門家が緊密に連携し、多面的な活動の継続を可能としました。その結果、科学的客観性に基づく生態系解明という私たちの活動基盤を確立できました。

高木仁三郎市民科学基金のクラウドファンディングご案内につきましては、皆さまにご理解いただけると幸いです。


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