8月20日(土)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
なんとかカンムリを1羽、見つけることができました。
概況を記します。
天気:くもり(時折、日が差す。昼前に一時降雨あり)
調査時間:9:28から14:47まで
調査結果:カンムリウミスズメ 1
この日は、調査が急遽決まったこともあって、船長さんを含めても3人という調査体制なので責任が重い。とはいえ、カンムリとの遭遇確率の低い時期でもあり、気合だけではどうにもならない。
港を出てしばらくはウミネコの着水個体がポツポツとあり、四代沖までで延べ20羽くらい見られた。若い鳥も結構いた。横島近くで、1匹だがダンスを踊るように飛び跳ねる小魚を目撃。これが、DVDで見たことのある「イカナゴのダンス」1)だろうか。
その後は、途中、サメを1匹見ただけで、沖合まで何も出ない。それまで余り感じなかった船の揺れは、沖合に向けて走り出すと、さすがに南からの波を受けて、船の上下動が激しくなる。
沖合をしばらく東へ進んだ後、北寄りに進路を変えてすぐ、右舷に怪しい鳥影を見つけ、船を寄せてもらう。北寄りに進み始め、波が後ろからくるため、船の揺れは余り感じなくなっていたが、鳥のいた方向へ向きを変えると船が揺れ始め、私は一瞬、鳥を見失う。
船長さんから、「目の前にいる」と声がかかり、1羽だったが、カンムリを見つけることができた。

さすが船長さん、鳥のいた方角へ船を確実に進めていてくれたのだ。この個体は、あまり警戒する様子もなく、繰り返し、水中を覗き込む。

船の揺れでファインダーの中に鳥を入れるのが困難な上、鳥の方も波間に見え隠れし、その上、頭を水中に突っ込むため、顔を上げた写真が中々撮れない。

切ったシャッターの割にはまともに写ったものがほとんどなかった。条件が悪いのだから仕方ない。でも1羽でも出てくれたのだから、カンムリ様様である。この個体、観察中、一度も鳴き声を発しなかったので、ペアのもう1羽はいないだろうということで、次を探すことに。
島沿いにしばらく進んだ後、進路を西に変え、走っていると西の空が怪しくなってきた。そうこうしていると遠くに見えていた島が霧の中に消え、雨がポツポツと降り始める。どんどん激しくなってくる。船の進路を北寄りに変えたので、このまま帰港かと思っていると、再び、船は西向きに進みはじめ、天気の方も雨が上がり、薄日が差し始めた。通り雨だったようだ。
後でGPSで記録した航跡図を見て分かったことだが、船長さんは、この最近、カンムリが見られたところをその日の調査コースの中に入れ、丹念に周回しているのである。船長さんの頭の中には、きっと正確な海図があるのだろう。
お昼もだいぶ過ぎたので、宇和島の島陰で停船し食事を摂る。決して大きな島ではないのに、あれだけあった波が、島が一つあるだけで、凪いでしまうのだから不思議である。揺れる船で双眼鏡を使っていたからか、私も少し船酔い気味。何とかニコニコ亭の弁当は完食したが、用意してきたお茶うけは、さすがに食べることができなかった。因みに、この日配ったのは、六日市で買った「麦ころがし」と日原で買った個包装の「源氏巻」。いずれも島根県のお菓子だ。六日市は今は吉賀町で先日亡くなった森英恵さんの出身地らしい。奇遇と言えなくもないが、たまたまドライブに行った折、買い求めたもので、賞味期限ぎりぎりセーフ、この日の調査がなければすべて私の腹に入る運命だったものだ。
いつものことだが食事が済むとすぐに調査を再開。しばらく胃の辺りばかりが気になる。船は横波を受けてローリングする。向かいの波のピッチングもきついが、横揺れはなおきつい。さすがに双眼鏡で遠くを見る頻度は下がった。実際、波がある時は、双眼鏡の有効距離は目視可能な距離とあまり変わらない。
船の進行方向は、お盆に船長さんがカンムリのペアを見た海域に進んでいるようだ。1週間前くらいの情報なので、行ってみる価値はある。しかし残念ながらカンムリはヒットしなかった。後ろからの波なので、あまり船は揺れず、胃の具合は少し収まったものの、今度は激しい睡魔との戦いが待っていた。立ち上がってみたり、腕を上に伸ばしてみたりと抗うが、座ると、また眠くなる。
何とか耐えて横島沖から地寄りに最終局面に入るも午前中見かけたウミネコすら見かけない。上関大橋付近で、やっと海面すれすれを飛ぶカワウが1羽。白浜港に入港した時、奥の砂浜にウミネコの群がいた。どうりで海上では見かけなかったわけだ。
下船後、岩壁からウミネコの群を撮影する。砂地で休んでいるものや水面で水浴びしているものもいる。ざっと30羽くらいいただろうか。若鳥が多い。今年生まれのものが繁殖地から飛んで来たのだろう。本県の瀬戸内地域に繁殖地はないので、四国や九州方面に繁殖地があるのかもしれない。
この日の調査は、少ない調査人員で1羽でもカンムリを見つけられたのだから、「お手柄」と言っていいだろう。陸に上がっても、胃のあたりの不快は、依然、取れない。本当に久方ぶりの船酔いだった。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。
1)イカナゴダンスの映像は、上関の自然を守る会発足
15周年記念
DVD「未来へのおくりもの 上関原発予定地は“奇跡の海”」に収録されています。詳細は
ホームページの販売 をご覧ください。