7月23日(土)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
今回は残念ながら、カンムリを見つけることはできませんでした。
概況を記します。
天気:晴れ
調査時間:9:38から15:08まで
調査結果:カンムリウミスズメ 0
薄曇りではあるが、空気が澄んでいるのか、遠望が利き、遠く四国や九州が望める。波もなく穏やかな海である。この日のトピックは調査船に日よけが設置されたこと。

船長さんによると、船の後部まではカバーできないが、効果てき面で、遊漁客にとても快適だと喜ばれていると。しかし、船べりに庇が来ているため、釣り客が魚を釣り上げる時、竿を立てすぎて、竿を折るというアクシデントが2件あったそうだ。
海上は船が走っている時は、風を切って進むので、暑さはあまり感じないから、今のところ日よけの効果のほどは分からない。べた凪だからか、横島沖にはゴムボートの釣り船が出ている。
いくら波がないとは言っても、ゆらゆら揺られて、この日差しの中で、長時間、私ならとても耐えられないと思う。へいぐんブイが見えてきたので、前回はウミネコが1羽、止まって休んでいたが、今回は? 双眼鏡で確認すると、奥側に2羽いる。
しばらく進んだころ、八島沖でもウミネコの着水している個体や上空を旋回している個体が見られた。サメも時折、見かけるもののカンムリの姿はない。
天田島近くでは岩場に10数羽が止まって休んでおり、近くの漁船周りにも10羽内外の群が見られた。船長さんの話では、落とし網漁のイワシを狙っているとのこと。
鼻繰島の岸辺近くを周回してもらったが、釣り人が何ヵ所にも陣取っていたため、前回見かけたクロサギは近くにはいないようだった。アオサギやカワウ、カルガモはいた。今回はミサゴも見られたが、繁殖期のように船の近くを警戒声を発しながら飛び回るようなことはなかった。
田ノ浦沖を通過時、海岸の清掃活動をしている人たちが遠くに見えた。海辺で遊んでいる親子連れもいる。8月には上関ネイチャープロジェクト主催で2回、砂浜クリーン大作戦が計画されている。
祝島を右手に見ながら沖合に進むが、やはり海上で見られるのはウミネコばかり。
しばらく進んだところでお昼にしようと船を止めたところ、どこからか1羽のウミネコが船の近くにやってきて、物乞いをするかのように船の後方に着水する。弁当は食べ終わっていたので、投げてやるものもなく、昼前に配られた最中の皮を投げてみる。取りに来るかと思ったが、私の動きに驚いて飛び立っただけで、また近くに着水する。どこで見ているのか、その動きに触発されるかのように1羽、また1羽と飛んできて、都合、4羽になった。投げるものもなくなったので、お茶うけを配る。前日、地元の「饅頭屋」で買ったブッセ。ブッセは、本来はフランス語の「一口」サイズのお菓子やオードブルを指すらしいが、お菓子としてのブッセは日本生まれの焼き菓子なのだとか。この焼き菓子は地元の「銭の菓子本舗」で購入したものだが、ここの看板商品は「銭の菓子」という和同開珎を模った最中で、このお店は昔からの人は「小野の饅頭屋」と呼んでいて、代替わりした店主は洋菓子が専門で、こうした洋風の菓子やケーキも昔ながらの商品とともに売られている。
さすがに船が止まると、ムッとして汗ばんでくる。
ゆっくりする間もなく、午後の調査を開始。船が走り出すと、風を受けるので、そう暑さは感じなくなったが、睡魔が襲ってくる。まだ、カンムリが1羽も見つかっていないので、こんなことではいけないと、右左、前方とかなり遠くまで見回す。しかし、何度も意識が飛んで、航跡波の揺れで我に返るということが続く。船の後部で頑張っていたTさんも日よけの下に移動してきた。後で、日よけがあるとないとでは大違いと言っていたので、初めから日よけの下にいた私が、その有難さが分からなかっただけのようである。
沖合を走っていると、霞がちではあったものの、佐田岬と佐賀関に挟まれた豊後水道や伊方原発が肉眼で確認できる。

八島が伊方原発の30キロ圏に一部が入っているということなので、距離的にはそのくらいは離れているはず。30キロという数値(UPZ)には一応、根拠があるのだろうが、その日の風向や天候で事故の影響は大きく変わるし、海の向こうとは言え、目で見えるところにあると、さすがにぞっとする。上関原発が建設されれば対岸の祝島との距離は、たった4キロ。島民の不安は、察して余りある。絶対に原発を建てさせてはいけないのだ。その後も、見られるのはサメとウミネコばかり。
島で故障したコウモリ調査の機器回収のため、研究者のTさんを下した後、船の接近を嫌って飛び立つミサゴを見たのみで、とうとう、この日はカンムリとの出会いはなかった。

船長さんも20キロ、30キロ先が見えるのに、何故、カンムリが見つけられないのかと嘆いていたが、出ない時は出ないものである。
蒲井や横島の磯で回収した船長さんのお客さんも、今回は私たち同様、釣果が上がらなかったようである。さすがに彼らも言葉少なであった。
(この調査は、地球環境基金、パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク助成金 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。