2022/1/8カンムリウミスズメ調査報告
2022年最初のカンムリウミスズメ調査で22羽を確認でき、おめでたいスタートとなりました。
- 調査時間 9時30分から14時45分まで
- 調査結果
カンムリウミスズメ22羽確認 ヒヨドリ渡り 300羽程度? ハヤブサ 2羽 カモメ類、ウ類
2022年明け調査をいつから始めるか5日の朝、天気予報を見ていると折りも折り、
船長から「新春一発、カンムリ調査、土曜日がよさそうですがどうでしょうか?」とラインが入る。
なんとタイミングの良いことか!「カメラマンさんにもスケジュールを組んでもらいましょう!」と返信。
早速、カメラマンさんにアポを取ると、急な要請にもかかわらず二つ返事でOKが来た。
いよいよ、カンムリ調査チームの始動だ!!
9:30 「じゃあ、今年初めての調査に出発しまーす!!」
船長の掛け声よろしく船出だ。「新年のご挨拶に出てきてくれんかね?」とみんなはしゃぎ気味である。
いつものコース取りで進路をとる。初春の日差しは温かく風は冷たいが、すがすがしい。海面に映る陽光の帯までが初々しく見えるのは気のせいだろうか。
島方面に南下する。この頃から思ったより波があり正面からしぶきを浴びる。慌ててライフジャケットをカッパ代わりに膝に掛ける。今日は穏やかだろうとカッパを家において来てしまったのだ。日ごろから多めの着替えを詰め込んでおくのだが、今日は油断してしまった!
冬の調査では着るものを十分すぎるほど準備しておかなければならない。船長の口癖が「暑すぎるくらい着こんでよ!寒うなり始めてから着こんでも絶対あったまらんからね!!」である。彼は冬場、真夜中にサヨリ漁に出るので、その経験を踏まえているのだ。
島東にさしかかり、これから南下するのだなと思ってみていると、船長の「カンムリおったよ!!」の声。
今年初の2羽のお目見えだ!思わず「明けましておめでとう!!」と声を掛ける。
この子たちはしきりに水面を覗き込む仕草をするのでカメラになかなか収まらない。シャッターを切る時間差で画像は覗き込んだ後ろ頭ばかりである。今日は鳥博士のHSさんが北海道に鳥見の大旅行で不在なのだ。動画はカメラマンさんがいるので安心だが、静止画は私の担当なので頭が痛い。
「さあ、今日は幸先良いよ〜!次に行くからね!」とスタートして間もなくKさんが「船のすぐ横にいるカンムリ2羽を指さす。船が近すぎたせいか、この2羽は最初からカンムリを立てて「おかんむり」で警戒モードである。
潜りを2回繰り返すとアッという間に飛び立ってしまった。
南下して10分ほどでまた2羽を確認。このペアは落ち着いた感じでゆったりと波間に漂っている。下手な私でもカメラに収めることが出来る。「この子はおりこうさんじゃのう!」と船長。「人間様の都合で評価されたんじゃ、カンムリもたまったものじゃないよね。」と笑いながらおりこうさんのカンムリたちに別れを告げる。
周回し島方面に進路をとるが北東の風が強く双眼鏡もままならない。島中間あたりでさすがの船長もこれはまずいと思ったのか、進路を変え北上する。
すると島南方に4羽のカンムリを確認。ところがこの4羽、船が近付くと左右2グループに分かれてしまった。
「どっちを先に撮る?」と船長から贅沢な打診が来る。左舷側に決めてカメラマンさんと私が撮影の間、Kさんは右舷側のカンムリの見張り役である。左舷側を撮り終えて右舷側のカンムリにカメラを向けた途端、「フン!」とでも言うようにピーと甲高い声を残して飛び去ってしまった。
「きっと、待っとったのに注目してくれんかったから、気を悪くしたに違いないね。」
と見送っているとKさんが
「ヒヨドリ!ヒヨドリ!!」と大声で叫ぶ。
見ると左舷側をヒヨドリの一団がすごい勢いで沖合に飛び去って行く。
ヒヨドリの渡りに初めて遭遇するカメラマンさんはわけがわからず
「今の何?」と言っている。
島方面に向かい、海面すれすれに動く塊を指さすと
「スゲー!!動く島みたいじゃん」と感嘆の声を上げる。
と目の良い船長が「ハヤブサじゃ!追いかけよる!」
と叫ぶ。
見れば2羽のハヤブサがヒヨドリの群れに何度も執拗に突撃を繰りかえしている。
私もハヤブサの突撃は何度か目にしたが、こんなに執拗なのは初めてだ。
きっと、お腹が空いているのだろう。
「よし、全速力で追っかけてみよう!」と船長。
船は風を切りぐんぐんヒヨドリの群れに接近する。
2羽のハヤブサはひらりひらり上空を旋回したかと思うと群れ目掛けてすごいスピードで急降下する。
前になり、横になり群れを分解させるかのように追いかける。
と「あっ!ヒヨが落ちた!!」船長が指さす。
見ると海面にヒヨドリが1羽浮かんでいる。
「カメラマンさん、撮れ!撮れ!!」と船長が叫ぶ。
次の瞬間、目にも留まらぬ速さで急降下したハヤブサがヒヨドリを両足でむんずとつかんで島方面にスイーっと飛び去って行く。
鷲つ゛かみとはまさにこのことである。一瞬の出来事だった。
眼前で繰り広げられた自然界の厳しいバトルに興奮冷めやらぬ中、船長が一言
「ハヤブサも飯にありつけたし、犠牲になった1羽のおかげで300羽が助かったんじゃから、良かったんよ。」
と優しい言葉でフォローする。
次はカメラマンさんの撮影の成否である。
「うーん、ピントが合ってればいいんだけど?」
その答えは動画から取り出してもらったブログにアップした写真で証明されている。
祝島で昼食休憩を摂ろうと船を南下させる間にさらに4ペアを確認できた。
祝島の東側の波止ではウミネコ類の行列の歓迎を受ける。その中に今日はウが交じっている。
「雑居ビルだね。」とカメラマンさんが言えば
「白黒でピアノの鍵盤みたいじゃ。」と船長。
人によって感想が違うのが面白い。
お弁当を広げていると目の前でウが行ったり来たりしている。
「今、魚を獲ったよ!望遠で撮って!!」と船長。
船長のお達しに慌ててファインダーを覗く。
何とか2枚採餌シーンを収めたが、逆光なのが残念である。
獲った魚はホゴメバルであろうという判定になった。
昼食後は北東の風を避けて船を進める。
島を周回しようとしたところで
「ハイ!また、いましたよ〜」と船長。
午前中で20羽も確認しているので、その声も余裕である。
周回して再び南下するが、風は収まらず、ブイまで南下することにする。
その後は波に遮られ、確認出来なかったが、トータル22羽確認できた。
沢山のカンムリに出会えた日は帰りの船足も心なしか軽く感じる。
風も収まり、瀬戸内特有の鏡のような海面を船は滑る。
島並みの上に浮かぶ雲が水面に幾重にも映って美しい。
最後に島で磯釣りをしておられる遊漁メンバーをお迎えに向かう。
この方たちは良く調査の最後にお迎えに行くメンバーで船長曰く「釣りさんチーム」である。
対する私たちは「鳥さんチーム」なのである。
船上での会話はいつも「今日は、どうじゃった?」から始まる。
この釣りさんチーム、なかなか釣果が上がらず、9割は釣れなかった残念談である。
「今日は向こうも大漁だといいね!」と私が言えば
「どんな言い訳が待っとることやら?」と無慈悲な船長。
ところが、今日は3人のうち、お一人が大物釣りに成功されたのだ!
笑みで満面相好を崩して乗り込んで来られた。
見れば、タイにグレ、チヌとサイズの大きいものがアイスボックスに所狭しと詰め込んである。
別のお一人もまあまあだったようで
「小さいのをお土産にあげるよ!」と言ってくださった。
すると「大丈夫!大漁の○○さんのが欲しいってよ!!」と私は言ってもいないのに?!切り返す船長。
言われた○○さんは、一瞬「間」を置いて「いいよ!」
その微妙な「間」に一同、同情の笑いが巻き起こる。
結局、○○さんは貴重な獲物からグレと鯛を恵んで下さった。
お礼に今日の釣果の記念写真を掲載しておこう。(個人情報保護の観点から修正させていただいています。)
とにかく、新年初の調査は素晴らしい出会いで終わった。
明日はTさんとSさんが参加予定で賑やかである。
明日も良い出会いがあるよう、お見えになるお二人のためにカンムリたちにお願いしておこう。
なお、○○さんと船長のおかげで夕食はグレと鯛、ボラのお刺身にサヨリのフライという贅沢な食卓になりました。
(この調査は、セブン‐イレブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、
パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金
を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。