9月28日(火)
カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。
カンムリウミスズメ1羽を確認することが出来ました。
カンムリウミスズメ1羽、ミサゴ3羽
調査時間10時から15時30分まで
10:00ちょうどに白浜港を出港すると、八島に向かう上関丸に出会う。
八島は昼食休憩でよくお世話になるので、もしかしたら今日また再会できるかも?と思いながら見送る。(結局八島で休憩ではなかった)
昨日よりは波風が穏やかであるが、やはり台風の影響かいくらかうねりは残っている。
台風のせいか、航路上に船影が少ない。
調査のおまけの楽しみのひとつが思いがけない船との出会いである。
上関海域では主に3つの航路がある。
室積半島沿いに上関大橋の下を通る航路。
長島と八島の間を通る航路。
山口県と愛媛県の県境辺りを通る航路。
数年前、カンムリの繁殖地探しでスポットライトサーベイという調査を試みたことがある。
上関海域は今のところ、カンムリウミスズメを1年間を通じて確認できる世界で唯一の場所である。
ということはどこか近くに繁殖地があるのではないか?研究者たちも強い関心を寄せ、アメリカ、カナダ、ベトナムなどからやって来て合宿したことがある。
カンムリウミスズメは夜間に繁殖地の島に帰って来るので、海面にスポットライトを当て島の周囲を探すのである。
結局、その調査では確認出来なかったが、その時、一番沖合いの航路を豪華客船が通るのを目にした。多分5~6階建てだったと思うが、闇夜の中にきらびやかな灯りが幾重にも重なって連なる様は本当に艶やかであった。
話が横に逸れてしまったが、沖合いに南下。旋回して島に近付く。
北端の岩に猛禽類らしい鳥の姿が見えた。
数年前、いつもこの岩に止まり近付く者を威嚇するような眼光鋭いハヤブサがいた。
私たちは「ヌシ」と呼んで「お邪魔します!」と言ったものだ。
もしやヌシでは?カメラを向けた瞬間、飛び立ってしまった。
ピンぼけではあるが、写真に撮れたので、翌日HS鳥博士に確認をお願いしたら、残念!ミサゴだった。
船の進路で息子さんからの宿題消化だなと思って見ていると「また、クラゲ獲らしてね!」と船長。
秋も深まりクラゲが少なくなって来たと1週間前のお魚パック発送の際にメイボハゲを持って来られた漁師さんが嘆いておられた。エサがなくては漁が出来ない。息子さんもつい2~3日前、漁に出たもののクラゲが取れず、漁を諦めて帰って来たそうだ。クラゲはまさに生命線なのである。島を2回周回し、計4個をゲット出来た。
宇和島の入り江で遅めのお昼となる。
今日もまだ、カンムリに会えていないので、ちょっと中途半端なお昼となった。
「さあ、また探しますか!!」
船長のかけ声で双眼鏡を手に取る。
風がだいぶ落ちて凪いで来た。
沖合いに大きな船が見えたので双眼鏡で確認していると
「カンムリ!!」
とカメラマンさんが指差した。
見ると船の左舷側にカンムリが1羽浮いている。
この個体はまさに「浮いている」という表現がぴったりの落ち着いた風情である。
ゆっくり船を寄せていくと時々、海面に頭を着けて何かを探しているような仕草だ。
エサを探しているのか?と見ていると次の瞬間、羽ばたいた。
昨日、撮り損なった分を取り戻すかのようにカメラマンさんのカメラがカンムリを追う。
私も調査報告用に上手くないカメラを必死で構える。今日も鳥博士のHSさんが不在で報告者が私だけなので本当にプレッシャーである。
その後、カンムリはもう一度羽ばたいてくれたのだが、私は結局カメラに収めることが出来なかった。でも、カメラマンさんはきっちり記録出来たようで何よりである。
特に2回の羽ばたきシーン撮影に成功したのは大収穫である。と言うのも、カンムリウミスズメの生態はまだまだ不明な部分が多く、羽の生えかわる形態についてもそのひとつらしい。
上関は現在のところ世界で唯一、1年を通じて観察出来るので、解明のための情報提供が出来るのではないか?
羽の形態は羽ばたいた状態が一番解りやすいので動画記録が有効では?
研究者と相談して、今年度の課題に動画撮影を挙げ助成金も頂き、カメラマンさんにお願いしたという経緯があるのだ。
「元気でいてね!」
カンムリとの別れ際には思わず、この言葉が出てしまう。
大海原に漂う小さな彼らを見ていると、おっとりしてどこかはかなげでさえある。
最近もメバル網にかかり鳴いているところを漁師さんが助けたが、翌朝同じ網にかかり死んでいたそうだ。世界で推定個体数5000~10000羽にまで減少したのも、頷ける気がする。
カンムリ確認地点から北上し、さらに旋回し別の個体を探すが、ラッキーチャンスの再来とはならなかった。
帰りの船から振り返ると西の空の雲間から光の帯が射し込んで「カンムリに会えてよかったね」と祝福を送ってくれているようだった。
(この調査は、セブン‐イレブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、
パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金
を受けて行いました。 敬称略:五十音順)
※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。