2021年09月29日

9月のカンムリウミスズメ調査報告6

9月29日(水)、カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。

前日、前々日の調査で1羽ずつながら記録されているので期待したのですが、残念ながら1羽もカンムリを見つけることはできませんでした。

概況を記します。


天気:曇りのち晴れ

調査時間:9:50から15:25まで

調査結果:カンムリウミスズメ 0



天気は薄曇り、そう視界は悪くないのだが、少し波があって、その波頭が黒く見え隠れするため、非常に鳥が見つけにくい海況。

それでも7月の調査以来、まったくカンムリに出会えていない私としては、何とか結果を出したいと海を見つめ続けた。しかし、時折、着水しているウミネコを見かけるだけで、カンムリはヒットしない。前回の調査で配られた豆菓子の残りが救命胴衣のポケットにあったので、ボリボリとやる。何か変化がないと集中が続かないので、助かった。

その日、船長にはクラゲを採取するという別のミッションがあって、島沿岸に船を寄せ始めた時、山中の木の枝にハヤブサらしき鳥が止まっているのを見つける。少し行き過ぎたので、船を戻してもらい、船上から撮影する。鳥の方はじっとしているのに、船が波で揺れて、なかなか画面に鳥が入らない。距離があるためズームの必要があって、よけいにファインダーの中に収めるのが難しいのだ。周りには木々があってピントも合わせずらい上に、船の揺れによるカメラの胴体ぶれと、撮影した枚数のわりに使えそうな画像は添付した2枚だけだった。


ハヤブサ210929.jpg


クラゲの方は島周辺で合わせて5個体、それも大ぶりなユウレイクラゲが採れた。なんでもクラゲはウマヅラハギ漁(籠漁)の餌で、この時期はクラゲが少なくなってきて、ウマヅラハギ漁をしている漁師さんは餌の確保に苦労されているらしい。餌のクラゲを探しにわざわざ船を出すわけにもいかないので、秋になると漁を止める漁師さんも多いとのこと。船長の息子さんがウマヅラハギ漁をされているので、調査のついでにクラゲを採取できれば、一挙両得というもの。船長は、息子は自分が何をしてやっても礼の一つもないが、このクラゲだけには、「ありがとう」と言うんだと。私も、船長に「調査、様様だね」と返す。

島を周回している時、崖からミサゴが1羽飛び出す。撮影した画像で分かったのだが、趾に魚のようなものを掴んでいたので、私たちの船の接近で食事を邪魔されたものと思われる。

他島でもミサゴが2羽、トビとともに島の上を旋回していた。こちらも撮影した画像を見て分かったことだが、1羽は換羽中の個体のようだった。添付画像の尾羽に注目してほしい。尾羽の外側の羽根が短い=新しい羽が伸びてきている? のが分かると思う。


ミサゴ換羽中?210929.jpg


磯から黒っぽい鳥が飛び出す。ウではなさそうだったが、すぐに島の裏側へ回ったので確認できなかった。後追いで撮影した画像を見ると、クロサギと分かる。

一旦、島から離れ進みかけた時、昼食は船の上で良いかと打診がある。私が船上での食事を嫌うので、みんなが心配してくれたのだ。このまま進んだら港へ着くのは1時前、懸命な決断だと考え、私も了承する。島北岸の波が穏やかな海域へ船を回し、そこで食事となる。

食事前、いつものお茶うけのお菓子を配る。先日、アカハラダカの渡りの観察に行った対馬土産の「かすまき」5個入り。調査メンバーは5人、数に問題はない。口に入らないことも想定して私は2個入りを別に購入し、既に賞味していたので、どういう状況であれ、余裕があった。「かすまき」は、「江戸時代に参勤交代から帰京した領主の無事を祝い、長旅の疲れを癒すために作られたともいわれています」と、しおりにあり、「日本ではまだ珍しかったカステラ風生地を使った菓子は非常に高価で、朝鮮交易などで栄えた当時の対馬藩の栄華をしのばせる一品」とも。

食後すぐに調査を再開。島方面へ進んでいる時、遠くに定期船いわいの姿を見つけ撮影。いくら鳥が出ないからといって、いつも船の写真ばかりではと思いつつも、結局、今回も船の写真ばかりとなる。

沖に霞んではいるが大きな白っぽい船が見える。船名が確認できず、結局、何する船か分からずじまい。他島付近では、なぶらが立っていたが、魚種については船長に聞きそびれた。


なぶらが立つ210929.jpg


既にアマツバメの姿はなく、島のてっぺんの枝にイソヒヨドリが止まっていた。帰路、柳井・平郡島間を結ぶフェリーの「へぐり」と、以前紹介したことのある海保の灯台見回り船「げんうん」を撮影。とうとうカンムリには出会えなかったが、帰港直前、スナメリの姿が見られたのはラッキーだった。



(この調査は、セブンイ‐レブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、

 パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金

 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



換羽中と思われるミサゴの写真が撮れたのが、唯一の救いです。この時期、換羽するのは成鳥と思われます。幼鳥は幼綿羽等が取れ巣立ち時点で羽が生え揃っていますから、羽根の脱落や伸長中の羽根が見られることはありません。

ハチクマの成鳥・幼鳥の違いも今時期であれば、ここがポイントとなるようです。カンムリウミスズメの成鳥・幼鳥の区別のヒントになればいいのですが・・・。


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2021年09月28日

9月のカンムリウミスズメ調査報告5

9月28日(火)

カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。

カンムリウミスズメ1羽を確認することが出来ました。

カンムリウミスズメ1羽、ミサゴ3羽


調査時間10時から15時30分まで


10:00ちょうどに白浜港を出港すると、八島に向かう上関丸に出会う。

八島は昼食休憩でよくお世話になるので、もしかしたら今日また再会できるかも?と思いながら見送る。(結局八島で休憩ではなかった)

昨日よりは波風が穏やかであるが、やはり台風の影響かいくらかうねりは残っている。

台風のせいか、航路上に船影が少ない。

調査のおまけの楽しみのひとつが思いがけない船との出会いである。

上関海域では主に3つの航路がある。

室積半島沿いに上関大橋の下を通る航路。

長島と八島の間を通る航路。

山口県と愛媛県の県境辺りを通る航路。

数年前、カンムリの繁殖地探しでスポットライトサーベイという調査を試みたことがある。

上関海域は今のところ、カンムリウミスズメを1年間を通じて確認できる世界で唯一の場所である。

ということはどこか近くに繁殖地があるのではないか?研究者たちも強い関心を寄せ、アメリカ、カナダ、ベトナムなどからやって来て合宿したことがある。

カンムリウミスズメは夜間に繁殖地の島に帰って来るので、海面にスポットライトを当て島の周囲を探すのである。

結局、その調査では確認出来なかったが、その時、一番沖合いの航路を豪華客船が通るのを目にした。多分5~6階建てだったと思うが、闇夜の中にきらびやかな灯りが幾重にも重なって連なる様は本当に艶やかであった。

話が横に逸れてしまったが、沖合いに南下。旋回して島に近付く。

北端の岩に猛禽類らしい鳥の姿が見えた。

数年前、いつもこの岩に止まり近付く者を威嚇するような眼光鋭いハヤブサがいた。

私たちは「ヌシ」と呼んで「お邪魔します!」と言ったものだ。

もしやヌシでは?カメラを向けた瞬間、飛び立ってしまった。

ピンぼけではあるが、写真に撮れたので、翌日HS鳥博士に確認をお願いしたら、残念!ミサゴだった。

船の進路で息子さんからの宿題消化だなと思って見ていると「また、クラゲ獲らしてね!」と船長。

秋も深まりクラゲが少なくなって来たと1週間前のお魚パック発送の際にメイボハゲを持って来られた漁師さんが嘆いておられた。エサがなくては漁が出来ない。息子さんもつい2~3日前、漁に出たもののクラゲが取れず、漁を諦めて帰って来たそうだ。クラゲはまさに生命線なのである。島を2回周回し、計4個をゲット出来た。

宇和島の入り江で遅めのお昼となる。

今日もまだ、カンムリに会えていないので、ちょっと中途半端なお昼となった。

「さあ、また探しますか!!」

船長のかけ声で双眼鏡を手に取る。

風がだいぶ落ちて凪いで来た。

沖合いに大きな船が見えたので双眼鏡で確認していると

「カンムリ!!」

とカメラマンさんが指差した。

見ると船の左舷側にカンムリが1羽浮いている。


カンムリ210928-1.jpg


この個体はまさに「浮いている」という表現がぴったりの落ち着いた風情である。

ゆっくり船を寄せていくと時々、海面に頭を着けて何かを探しているような仕草だ。

エサを探しているのか?と見ていると次の瞬間、羽ばたいた。


カンムリ210928-2.jpg


昨日、撮り損なった分を取り戻すかのようにカメラマンさんのカメラがカンムリを追う。

私も調査報告用に上手くないカメラを必死で構える。今日も鳥博士のHSさんが不在で報告者が私だけなので本当にプレッシャーである。

その後、カンムリはもう一度羽ばたいてくれたのだが、私は結局カメラに収めることが出来なかった。でも、カメラマンさんはきっちり記録出来たようで何よりである。

特に2回の羽ばたきシーン撮影に成功したのは大収穫である。と言うのも、カンムリウミスズメの生態はまだまだ不明な部分が多く、羽の生えかわる形態についてもそのひとつらしい。

上関は現在のところ世界で唯一、1年を通じて観察出来るので、解明のための情報提供が出来るのではないか?

羽の形態は羽ばたいた状態が一番解りやすいので動画記録が有効では?

研究者と相談して、今年度の課題に動画撮影を挙げ助成金も頂き、カメラマンさんにお願いしたという経緯があるのだ。

「元気でいてね!」

カンムリとの別れ際には思わず、この言葉が出てしまう。

大海原に漂う小さな彼らを見ていると、おっとりしてどこかはかなげでさえある。

最近もメバル網にかかり鳴いているところを漁師さんが助けたが、翌朝同じ網にかかり死んでいたそうだ。世界で推定個体数5000~10000羽にまで減少したのも、頷ける気がする。

カンムリ確認地点から北上し、さらに旋回し別の個体を探すが、ラッキーチャンスの再来とはならなかった。


調査帰路210928.jpg


帰りの船から振り返ると西の空の雲間から光の帯が射し込んで「カンムリに会えてよかったね」と祝福を送ってくれているようだった。



(この調査は、セブンイ‐レブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、

 パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金

 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



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2021年09月27日

9月のカンムリウミスズメ調査報告4

9月27日(月)

カンムリウミスズメの生息調査を実施したので報告します。ようやくカンムリウミスズメ1羽を確認することが出来ました。

カンムリウミスズメ1羽、ミサゴ1


調査時間10時から1430分まで


今日は朝から風が強い。朝ジョグの時、向かい風に苦労したので大丈夫か船長に確認。何とか出れるだろうとのことでひと安心。

10:00白浜を出港。南からの風を避けて進む。

「岩場に白い波頭が立っとるじゃろ。うねりが高い証拠じゃ。」漁師さんは海岸に打ち寄せる波頭を見てうねりを判断する。

何度このセリフを聞いたことだろう。いつもはパイプ椅子に座って船を操る船長が、今日は立ったまんま足を踏ん張り、四方八方に忙しく目を配っている。双眼鏡を持ち出す余裕もなく、波の頂点から谷間まで一気に滑り下りる感覚はちょうどウォーターコースターさながらである。無類のジェットコースター好きの私はしばしこの快感に身を任せる。


何とか灯台までたどり着き南下しようと試みるが、波が高く船長がコース取りに苦労しているのがわかる。

島の北側を周回し、風が収まるのを待つが一向に気配がない。

「これじゃあ、沖に出れそうにないけどどうする?」船長が振り返り、私の顔を見る。

「うん、いったん、早昼にしよう!」と私。

船の上下運動で体幹を使ったせいか、お腹も空いてきた。

風除けに田ノ浦に入り、お弁当を開く。

「調査の楽しみの8割はこのお弁当じゃ。」と船長。

そうなのだ!そして午前中にカンムリに会えた時のお昼のなんと美味しいこと!!

今日はその楽しみはお預けである。

お弁当を食べながら、遊園地談義に花が咲いた。

なんと船長もジェットコースター好きだったのだ。

お弁当箱を片付けていると上空にミサゴがひらりと尾根を越えて行った。慌ててカメラを取り出したが、時すでに遅しで撮影は出来なかった。


12:00を回る頃、風が少し収まって来たので島方面を目指す。

今日の船長にはどうしても行きたい理由がある。

息子も現役バリバリの漁師なのだが、今時期はメイボハゲ(ウマヅラハギ)漁をやっている。このハゲ漁が瀬戸内海でも数少なくなった伝統漁法なのである。

メイボハゲがユウレイクラゲを好んでエサにする習性を利用するのだ。

以前カンムリ調査の途中でユウレイクラゲにメイボハゲが50~60匹集まっているのを見たことがある。

メイボハゲに食べられたクラゲはボロボロになって海底に沈んでいった。これを人間様が再現する。カサの骨を逆さにしたような仕掛けにユウレイクラゲを入れ、ハゲがつつきに来た瞬間を手の感覚で読み取り、籠を一気に引き上げる。まさに五感を武器の、しかもエコな漁法なのである。

島を周回し、クラゲを探す船長の眼差しは真剣そのものだ。いつもは陽気な船長が「おやじの背中」になっている。

いくら海面に目を凝らしても私には見えないのに、船長はいち早くクラゲを見つけ、タモで掬いやすい位置に船を寄せる。結局、4つゲット出来た。

息子からの宿題を消化して船長に安堵の表情が浮かぶ。


さあて、またカンムリ探しである。

潮目のゴミの帯が続いている。

カンムリは潮目にいることが多いので、注意深く目を凝らす。

すると黒い流木の傍に白と灰色の物体が見えた。

「あれ、なあに?」

と言おうとした矢先、カメラマンさんが叫んだ。

「カンムリだ!!」

双眼鏡で確認すると紛れもないカンムリである!

何とかカメラに収めようと構えるが船の揺れが激しくピントが合ってくれない。

カメラマンさんも苦労している。

撮影しやすいように舳先に位置を代えたとたんに飛び立ってしまった。

「いつもと違って船の揺れでバタンバタン音が凄いけん、カンムリも怖がったんじゃろう」と船長。

ともあれ、8月、9月初旬と会えない日々が続いたので会えただけで最高の気分だ!

カンムリが飛び去った方向に船を走らせてみたが、再会は叶わなかった。


風はいくぶん収まって来たので、カンムリ撮影にトライしたいカメラマンさんは「もう、ちょっと沖に出れないかな?」とカメラマン魂を覗かせ私を振り返る。

調査のコースは風波の読みもあるので漁師さんにおまかせしている。

しばし様子を見ていると、船長が

「今日はこれでおしまいにしてええかね?腰が悲鳴をあげとるんじゃ」と珍しく弱音を吐いた。聞けば昨日からコルセットをはめているという。腰と膝の故障は漁師の職業病と言って過言ではない。船の揺れによる負担、網を引き上げる時にかかる重量など身体を酷使し続けているのだ。




  

(この調査は、セブンイ‐レブン記念財団 活動助成金、地球環境基金、

 パタゴニア日本支社 環境助成金、LUSHチャリティバンク 助成金

 を受けて行いました。 敬称略:五十音順)

※生息地保全のために詳細な調査区域を非公表としています。



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